まとめ
1章 戦略の基本
戦略とは?
- もともとは「戦争に勝つための総合的・長期的名計略」
- 転じて「企業が環境変化に対応しながら目標を達成するための打ち手」
- 目標=ビジョン: 理想の会社像。現在の延長線上になくても現時点と乖離していても良い。
- 戦略: 目標(ビジョン)を実現するための打ち手
「戦略」と「戦術」の違い
- 戦略: 大局的で長期的(数年単位)
- 戦術: 局地的で短期的(数ヶ月単位)
- 「戦術の失敗は戦略で補うことはできるが戦略の失敗は戦術で補うことはできない」
戦略を決める要因
- 外的要因: 政治、経済、社会、技術的環境などのマクロな外部環境、競合・顧客動向
- 内的要因: 自社固有の資産、ノウハウ、技術力など
戦略は外的要因、内的要因の両輪によって規定。SWOT分析は「外的要因」「内的要因」と良い/悪い点をクロスで見ていることに対応。
ポジショニングベース型戦略論
- ポーターによる競争戦略論
- 外部環境は所与のものと考え、企業の成功は外部環境に適合することでもたらされる
- 外部環境を緻密に分析しその環境に適合した位置に自社を置いてそれに応じた策を実行
資源ベース型戦略論
- 資源: 自社固有の能力、ノウハウ(営業力、開発力、ブランド力)
- 同じ環境(外部要因)でも成功、失敗が分かれる
- 企業の成功、失敗の差は企業それぞれの「資源」に起因すると考える
戦略の3階層
- 全社戦略: 企業全体を対象
- 事業戦略: 個別の事業を対象。どのように競争優位を築くかを考える
- 機能別戦略: 技術開発、調達、生産、マーケティング、人事などについて長期的な方針を考える
コア・コンピタンスとは
「顧客に対して価値提供をする中で他社にはまねできない自社ならではの中核的な力」のこと。「強み」との違いとして
- 顧客価値の提供に有益であること
- 他社がまねできないこと
- 展開の幅が広いこと
例として「ホンダのエンジン技術」「ソニーの小型化技術」が知られている。
現状分析の流れ
- SWOT分析: 強み、弱み、機会、脅威で分析
- 3C: 自社、顧客、競合で分析
- バリューチェーン: 購買物流、製造、出荷、販売・マーケティング、サービスと全体を支える人事、技術開発、調達活動
で要素分解してどこで競争優位を確立するかを考える。
2章 全社戦略
ドメインを設定する
ドメインとは「事業活動を行う領域」のこと。コア・コンピタンスを突き詰めドメインを設定する。設定する際のポイントは3つ。
- 顧客: 誰に対して価値を提供するのか
- 技術: 提供する価値をどのような技術で実現するのか
- 機能: 具体的にどのような価値を提供するのか
要は「誰に・何を・どうやって売るか」を決める。
その際、広すぎるドメイン(企業価値向上企業)や狭すぎるドメイン(半袖専門店)にしないように注意する。また、ドメインの転換も時に必要。IBMはメインフレームを中心としたハードウェアからソリューションサービスにドメイン転換し見事に復活した。
いずれも「顧客が何を望んでいるのか」「顧客に何を提供できるか」の顧客視点が重要。
商品/市場マトリックス
自社/競合の商品、サービスが「どのような顧客に向けられているのか」「ほかの商品とどのような関係があるのか」を知ることができる。
アンゾフの成長ベクトル
横軸に商品(既存/新規)をとり、縦軸に市場(既存/新規)をとる。事業がどのような状況にあるかを探りそれぞれの打ち手を考える。
- 既存商品×既存市場: 市場浸透戦略
- 既存商品×新規市場: 市場開発戦略
- 新規商品×既存市場: 商品開発戦略
- 新規商品×新規市場: 多角化戦略
利益率マトリックス
売上高と利益率で事業を見える化する。
- 売上高 大×利益率 大: 最重要事業
- 売上高 大×利益率 小: 固定費回収事業
- 売上高 小×利益率 大: 利益貢献事業
- 売上高 小×利益率 小: 要撤退事業
問題になるのは最重要事業「以外」の事業。
「売上高 小×利益率 大」の事業は存在感が小さいが利益貢献という観点で重要。
「売上高 小×利益率 大」の事業は一見存在感は大きいが利益貢献の意味では大きくない。とはいえ、設備産業など固定費が大きい事業では売上規模を稼ぐ事業は重要。
「売上高 小×利益率 小」は今後伸びる分野か?コストダウンの余地があるか?を判断し、利益率次第では撤退すべき事業といえる。
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)とは
外部環境である市場成長率と相対的市場シェアで区分する。
- 成長率 大×シェア 大: 花形
- 成長率 大×シェア 小: 問題児
- 成長率 小×シェア 大: 金のなる木
- 成長率 小×シェア 小: 負け犬
花形: キャッシュインが多いがシェアを守るため投資も多い
問題児: 今は投資>収益だが、うまく育てれば花開く
金のなる木: 出は少なく、入が多い。将来投資に向けられるかが重要
負け犬: 存在意義が問われるがまずはコストダウン。利益を出せれば生き残れる
3-4章 事業戦略
ポーターの「5つの競争要因」
- 競合他社: 量的(シェア)、質的(ポジション)に調査し戦略を検討する
- 買い手: 顧客も潜在的な競争相手(中抜き、内製化)になりうる
- 売り手: 納入品の希少性が高い場合、利益を奪われてしまう(インテルのCPUなど)
- 代替品: 航空機業界の競合は鉄道だけではない。TV会議システムも代替品として脅威
- 新規参入者: ニッチ業界でも大企業が参入してきたり、法改正で異業種が参入してくるなど
ポーターの「3つの競争戦略」
戦略の優位性で
- 差別化戦略: 何らかの差異化要素で共創優位を築く
- コストリーダーシップ戦略: 低価格で戦略を席巻
と競争の範囲を絞る「集中戦略」がある。
差別化戦略はブランドや製品特徴で差異化し購買につなげる。ただし、低コスト事業者がいるとうまくいかない。
コストリーダーシップ戦略は規模の経済が働く際は大企業が有利。固定費負担に差がある場合は中小が有利。ただし、ブランド価値が棄損したり消耗戦を招きやすい。
集中戦略は商品(タビオ、養命酒)、チャネル(ネット証券)、用途(日本電産のHDDモータ)、地域(平和堂)、品質(ロレックス)などドメインを特化し注力する。ただし、本当に顧客ニーズがあるのかを客観的に見極める必要がある。
戦略展開
- リーダ: 市場拡大、同質化
- チャレンジャー: 競争ステージを転換(ex. ドライで勝負したスーパードライ)
- ニッチャー: 参入障壁作り&需要拡大に対応
- フォロワー: 模倣が良いとされたが生き残れないことが多い。ニッチャーになるかリーダと強調
強者がとるべき戦略
一言で言うと追随戦略。弱者のマネをすれば経営資源の差で自然に勝てる。
- 包囲作戦: 弱者が展開したエリアを複数拠点で取り囲む
- 確率戦: 代理点数や拠点数など数による勝負を行う
- 広域戦: 広いマーケットで戦う
- 短期戦: 短期集中で資源を投入してシェアを獲得する
- 誘導戦: 先手を打って土俵におびき出す
弱者がとるべき戦略
- 局地戦: 細分化した地域、顧客層に絞る
- 一点集中主義: 攻撃するポイントを一点に絞る
- 一騎打ち: オンリー顧客に絞って攻める
- 接近戦: 直販など顧客と密接なコミュニケーション基盤を確立する
- 陽動作戦: 本当の狙いを悟られないようにする
VRIOフレームワーク
資源の競争優位性は4つの要因によってもたらされる。
- 価値(Value)
- 希少性(Rareness)
- 模倣可能性(Imitability)
- 組織(Organization)
特に模倣可能性は先行者利益、因果関係が複雑、社会的組み込み、制度保護の有無や「見えざる資産」(技術ノウハウ、信用、ブランド、従業員モラルなど)によって決まる。
6章 機能別戦略
破壊的イノベーションのマネジメント
- 高いレベルを求めていない層を狙う(メインフレームに対するパソコンなど)
- 既存事業とは異なる経験を積んできた人材
- 既存事業から独立した組織
- 早期に低コストで収益が出せるようにする
10章 新しい戦略の流れ
グローバル時代の新興国戦略
「富裕層」から「ミドルゾーン」へ主戦場が移る。
- 品質の現地化
- 機能の現地化
- パッケージの小分け(1回あたりの販売金額を下げる)
営業は
- 日本流の営業体制を構築
- 現地販売代理店と連携
の2つが考えられる。