概要
授業形式の語り下ろしで「わかりやすい通史」として絶賛を博した「昭和史」シリーズ戦前・戦中篇。日本人はなぜ戦争を繰り返したのか―。すべての大事件の前には必ず小事件が起こるもの。国民的熱狂の危険、抽象的観念論への傾倒など、本書に記された5つの教訓は、現在もなお生きている。毎日出版文化賞特別賞受賞。講演録「ノモンハン事件から学ぶもの」を増補。
感想
軽妙な語り口と膨大な調査に裏付けされた内容で一気に引き込まれた。昭和初期の史実を紐解くと学校教育での内容(主に反戦に力点が置かれているのも影響しているのだろうが)がかなり一面的だと思い知らされた。
欧米諸国に追いつくには資源の乏しい日本は拡大戦略をとらないといけないのは仕方ないにしても軍人の勲章欲による無謀な行動やトップ層の無責任さは読んでいて情けなくなることこの上ない。とはいえ、規模や影響度は違えども今の時代も同じような誤りを繰り返しているのかもしれない。
「むすびの章 三百十万の死者が語りかけてくるものは?」の教訓を改めて刻んでおきたい。
- 国民的熱狂をつくってはいけない
- 抽象的な観念論に傾倒し具体的・理性的な方法論を軽視してはいけない
- タコツボ社会における小集団主義に陥ってはいけない
- 国際的常識への理解(「ポツダム宣言の受諾」=「終戦」と誤解。ポツダム宣言の受諾は意思表明でしか無く終戦への調印が遅れたためソ連の侵攻を許してしまった)
- 対症療法的な発想ではなく、時間的空間的に大局観を持ち複眼的な考え方をしないといけない。