デジタルトランスフォーメーションの実際(ベイカレント・コンサルティング 著)


デジタルトランスフォーメーションの実際

概要

日米の先行事例を徹底分析!デジタル化の落とし穴と成功への具体策を示す。

はじめに

デジタルトランスフォーメーション=デジタルによる事業構造の変革。

  • 消費者向け:モノの所有から「新しい/楽しい/便利な経験」に価値が移った
  • 製品、製造工程:デジタル技術を組み込んで生産性向上
  • AIを活用して人間の判断業務を代替、熟練者がいなくても回る仕組みを作る。(一方で今のAIは「教師」が必要。職能を伝承する仕組みも必要)
  • Fintechの設立は2012年がピーク。エグジットも2016年がピーク。成熟期へ。
  • どういう体験/経験を実現すれば顧客に効果的なのかは現場が知っている。事業部門を巻き込む必要がある。新技術の目利きとしてIT部門も必要。そのリソースをどう振り分けるかは経営課題。場合によってはオペレーションや業務プロセス、企業文化、人材方針も変えないといけない。

加速するデジタル化のトレンド

まだまだ続く技術革新

  • プラットフォーマーであるIT Big5は顧客接点をもち高い技術力を持つ。この点で戦っても勝ち目はない。
  • プラットフォーマーが提供するサービスを顧客目線でうまく利用するかが重要。そのためには顧客に対して自社を差別化できる強みと価値を見極めることが必要。プラットフォームを活用して自社の強みを発揮することがデジタルでの勝者になるための近道。
  • プラットフォームだけではなくAPIを使って機能ベースでも外部のサービスを活用できるかがポイント。公開されたAPIを通じて他社のサービスを活用することで自社のコア機能強化に集中できる。また、自社のAPIを公開することで潜在顧客を獲得できる機会も増える。

デジタル環境が当たり前の消費者

  • アンビエントIT。周囲や環境に溶け込むITという意味。生活に溶け込んだセンサ情報を使い「必要な時に」「必要な場所で」サービスを提供する。
  • 新しい技術は企業より個人の方に早く浸透する。話題になっているデジタルサービスを試しに使ってみて多くのユーザに支持される理由を実感することで大きな潮流を把握することができる。
  • デジタルだけではダメで、デジタルで生まれた接点、期待に応えられるリアルがないと幻滅を生むだけ。

モノからコトへ、減速する所有欲求

  • 「モノ」の所有から新しい価値を体験する「コト」に価値観がシフト。
  • GoogleGlassは個人向けとしては失敗(ソフトウェアの完成度の低さ、プライバシー問題、見た目)したが、製造業向けとして復活。労働者が作業中でも手を止めずにマニュアルを見られる。労働者の「便利だ」「かっこいい」「楽しい」という体験も重視する時代になってくる。
  • シェアリングエコノミーの台頭。モノ(メルカリ)、移動(Uber, シェアサイクル)、お金(クラウドファンディング)など。
  • 企業でもコマツはスマートコントラクションで建設、採掘現場の情報を収集。無人ダンプトラック運行システムで無人走行を実現。コスト削減および難しい運転を自動化することで安全性を向上。
  • デジタルツイン。現場の製品の「双子」がデジタル上にいるかのようにシミュレート。ブレードの洗浄タイミングを高精度で割り出しコスト削減。

新たな競合環境

  • 競合環境も変化する。自動車は今までハードの競争だったが、これからは自動運転?の実現競争でソフトの勝負になる。
  • 近未来の競争相手はグーグル、アップルと見る経営者は多い。
  • イノベーションのジレンマ。既存企業は既存のマス顧客を重視するため新規参入社の破壊的イノベーションに結果的に敗れることが多い。
  • ディスラプラーにやられるのを待つか自社で新しいビジネスを創造するかのいずれかということ。

デジタルインテグレーション

  • 顧客に寄り添う
  • デジタルとリアルのチャネルを融合する
  • プラットフォーマーの提供するサービスと融合する
  • apiエコノミーを活用し他社のサービスと融合する
  • 従来の日本式のやり方にスタートアップ式の事業立ち上げ方法を統合する

続々と設置される企業のデジタル組織

デジタル組織の役割

  • 新しい技術の本質を理解する
  • 新しい技術を自社に取り込む
  • 社内のデジタル感度を上げる

全社横断型組織(デジタル戦略組織)

  • 全社最適の視点でデジタル戦略を立案、推進
  • 技術の最新動向、他社事例を調査し事業部門に情報連携
  • 各部門がどのような事業をしており、何を必要としているのかを理解しておく必要あり
  • 外部からどのような能力が必要かを定義して外部サービス、提携候補先を選定

事業特化型組織

  • 特定事業領域に集中的にデジタル戦略を実行
  • 特定事業の売上割合が高い
  • 社内の他事業との関連が薄く社内共通で進める必要がない
  • 規制緩和、ディスラプターの参入可能性が高い
  • 変革意欲・意識が高い

デジタルイノベーション型組織

  • デジタル技術を活用した新しいビジネスモデルを立ち上げる
  • 別会社を作るつもりで。人、就業ルール、給与体系も変えた方がよい
  • 経営からの強力なコミット、支援が必要

機能特化型組織

  • バリューチェーンの特定機能に対してデジタル化を推進。
  • IoT,AIなどの技術で効率化、高度化の実現が目的
  • 各部門の業務内容と課題を理解することが重要。どのようにデジタル化を進めると全体最適が実現し効率が上がるか検討
  • 新しい技術はリスクがつき物。顕在化した課題に対応しながら進めるにはIT部の協力が必要。

デジタル化の対象となりうる部門共通機能

  • デジタルマーケティング
  • 販売
  • 生産管理
  • アフターメンテナンス、コールセンタ

デジタル組織を機能させるコツ

  • 予算の割当
  • 事業部門の理解醸成
  • IT部門からの協力
  • 要員の採用と育成
  • 既存資産の軽量化も合わせて行う必要がある

日本企業のデジタル戦略の問題点

明確にならない新しい事業の柱

  • 完全に新規領域でビジネスを立ち上げようとすると二番煎じになりやすい
  • 足りない要素をM&Aで補おうとするとM&A自体が目的化しやすい
  • ビジネス規模が既存事業と比べ小さく実現に結びつかない
  • 既存の強みを伸ばす方向でデジタルを考えるべき

デジタル組織が孤立

  • 社内ヒアリングばかりでアウトプットがない
  • 競合がどのようなサービスを仕掛けているか、他業界で先進サービスがどのようなものかを案外知らない

道標なきシリコンバレー崇拝

  • 情報収集だけではスタートアップにメリットがない。自分たちのビジネスアイディアを持ち込み面白いと思わせないといけない。
  • 駐在員に権限がなく意思決定が遅いケースが多い。これではシリコンバレーでは相手にされない。
  • 自分自身が作り上げたいアイディアがあるか。情熱を持ってぶつけられるか。
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