単調尤度比とKarlin-Rubinの定理

投稿者: | 2017-09-03

前回の記事「一様最強検出力検定とネイマン・ピアソンの補題」では、帰無仮説、対立仮説ともパラメータが1つのみという非常にシンプルな構造をした仮説検定を考え尤度比検定が一様最強検出力検定になることを示しました。

確率密度関数が単調尤度比という性質を持つ場合、片側検定

  • H0: θθ0
  • H1: θ>θ0

に対して十分統計量を使って一様最強検出力検定を構成できること(Karlin-Rubinの定理)が知られています。

単調尤度比

まず単調尤度比(monotone likelihood ratio, MLR)について定義します。

確率密度関数g(t|θ) (tR, θΘ)が任意のθ2>θ1に対してg(t|θ2)g(t|θ1)tの単調非減少関数になるときg(t|θ)を単調尤度比と呼ぶ。

定義を見ただけだと単調尤度比になる確率分布があるのだろうか?と思いますが正規分布(分散既知)、ポアソン、二項分布等の確率密度関数は単調尤度比になります。少し一般化した次の事実が知られています。

確率密度関数がg(t|θ)=h(t)c(θ)exp[w(θ)t]の形で書けw(θ)が単調非減少関数ならばg(t|θ)は単調尤度比である。

実際、

g(t|θ2)g(t|θ1)=c(θ2)c(θ1)exp[(w(θ2)w(θ1))t]

なので確かにtの単調非減少な関数になることが分かります。

Karlin-Rubinの定理

片側検定

  • H0: θθ0
  • H1: θ>θ0

に対して十分統計量Tを使って

  • Tt0ならばH0を棄却
  • T<t0ならばH0を採択

する検定TMを考えます。この検定TMは次のKarlin-Rubinの定理から一様最強検出力検定であることが知られています。

統計量Tはパラメータθの十分統計量でありTの確率密度関数g(t|θ)は単調尤度比であるとする。この時、検定TMは有意水準α(=Pθ0(T>t0))の一様最強検出力検定である。

証明の概略はパラメータθ(>θ0)を任意に固定し次の単純仮説

  • H0: θ=θ0
  • H1: θ=θ

を考えます。g(t|θ)は単調尤度比よりθ(>θ0)に対しg(t|θ)g(t|θ0)は単調非減少関数になるので

λ(t)=g(t|θ0)g(t|θ)

は単調非増加関数になります。これよりある定数k>0が存在して

Tt0λ(t)k

が成立します。そこで、λ(t)kと比較してH0の棄却/採択を決定する仮説検定Tを考えるとネイマン・ピアソンの補題[1] … Continue readingから検定Tは有意水準αの一様最強検出力検定であることが分かります。θ(>θ0)は任意なので検定TMは一様最強検出力検定になります。

シリーズ記事

参考文献

  • Casella, G and Berger, R.L.(1990), Statistical Inference(Second Edition): Section 8.3.2 Most Powerful Tests

脚注

脚注
1 統計量T(X)が十分統計量の場合、T(x)を用いて単純仮説に対する一様最強力検定を構成出来ます。この結果もネイマン・ピアソンの補題と呼ばれることがあります。

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