変数を分離する
和・差の分離
まず、平均の基本的な性質として線形性があります。
つまり、線形変換Y=aX+bした確率変数の平均E[Y]はE[X]から容易にわかります。また、確率変数同士の線形和の平均もそれぞれの確率変数の平均の和に分離できます。
いずれの性質も積分(or Σ計算)の線形性から容易に示せます。この性質は推定量の不偏性(推定量の平均が母集団のパラメータと一致すること)を示す問題で活躍します。例えば、
という問題ではE[Xi]=μなので、
E[ˉX]=E[1nn∑i=1Xi]=1nn∑i=1E[Xi](∵平均の線形性)=1n⋅nμ=μ
とXiの平均に帰着することで標本平均の平均を求めることができます。
積・商の分離
確率変数の積の分離については以下の性質が知られています。(商についても同様)
つまり独立な確率変数の「積の平均」はそれぞれの確率変数の「平均の積」と一致するので、それぞれの平均を求めれば積の平均を求めることができます。
例として次の問題を考えてみます。
自由度p,qのF分布に従う確率変数Xは自由度pのχ2分布に従う確率変数Uと自由度qのχ2分布に従う確率変数V(U,Vは独立)を用いて
F=U/pV/q=qp⋅UV
とかけることに注意すると
E[F]=E[qp⋅UV]=qpE[UV]=qpE[U]E[1V]
と2つの平均の積の形で表すことができます。ここで、
- E[U]は被積分関数に自由度(p+2)のχ2分布
- E[1V]は被積分関数に自由度(q−2)のχ2分布
の確率密度関数が現れることに着目し、平均の解法1で紹介した定石「確率密度関数の定義域上での積分に帰着」を使うと
- E[U]=p
- E[1V]=1q−2
が得られます。これより
E[F]=qpE[U]E[1V]=qp⋅p⋅1q−2=qq−2
を得ます。ちなみに定義に基づいて計算すると
Γ(p+q2)Γ(p/2)Γ(q/2)(pq)p/2∫∞0x(p/2)[1+(p/q)x](p+q)/2dx
を計算することになり計算の方針を立てるのさえ苦労しそうです。2つのχ2分布の平均に帰着させることでより簡単に平均が求められることがよく分かると思います。