概要
データ解析コンペティション特集号でH20年度のコンペで上位入賞になった方の手法が発表されています。
題材はライフスケープマーケティング社が提供している「食MAP」データで
- 食卓データ: いつ(朝昼夕)どんな食材を使ったメニューが食卓に出たか
- 意識データ: 食生活、メニュー作りに関するアンケート回答
が含まれています。一般的なPOSデータだとスーパーなどの店頭で「何が売れたか」が分かるのに対し、食MAPでは「どのように消費されているか」が分かり購買後の消費行動まで迫れる点に大きな特徴があります。
ちなみにこの回が開催されたのがちょうど入社1年目で私も参加していたのですが、プロジェクトの関係で途中で抜けてしまい不完全燃焼でした。
世帯特性と素材特性を考慮した階層的メニューレコメンデーションシステム
前年に続き関先生らが率いる群馬大のチームが最優秀賞に輝きました。このコンペはテーマ設定をどうするか?も審査対象ですが、前年同様に「メニューレコメンド」と王道なテーマを選びその分析の切れ味で勝ちきるという横綱相撲でしたね。
ポイントはやはり特徴量生成に工夫を凝らしているところで
- 主菜度の導入
- 世帯嗜好は主成分で解釈
- メニュー特性は素材特性から構成。双対尺度法を使い解釈可能な4軸を選定
- メニューカテゴリを多項ロジットでモデル化
とさらっと書かれていますが、背後では多くの試行錯誤をしたのだろうなと思わせる内容です。
食卓メニューデータに基づくメーカ主導のタイミングを考慮した販売促進のための分析フレームワーク
私が所属していたチームの論文で新人3人+先輩数名でスタートしたものの結局、第二著者の後藤くん以外の新人は別案件で途中離脱してしまいました。中間発表のときは突貫で「中食」について簡単な集計をしてお茶を濁した記憶があるのですが方針を抜本的に見直して最終的には「メーカー目線での棚割り」をテーマに分析をしています。
ざっくりいうと
- ターゲット顧客の抽出: 支持度、食卓シェアなどの尺度を使いDEAで評価
- セグメントの特徴分析: DEAの仮想出力値を特徴ベクトルとしてクラスタリング
- メニューとタイミングの分析: 各食卓機会でどの程度対象食材が利用されているか、利用タイミングにどのような違いがあるかをTI値で比較
をして、いわゆる「料理のさしすせそ」で分析しています。このあたりはママさん分析コンサルタントである矢野さんの目線が入っているのかな?という気がしますね。
需要要因分解モデルによる予測と多面的な顧客理解への活用
勝又先生の論文で需要にいたる意思決定を要因に分解し顧客の需要構造を推定する分解モデルを構築しその有用性を検証しています。
ポイントは需要構造をモデル化する際に「自社以外のデータ」は欠損となることが多くその点を考慮したモデルを提案されています。
具体的には
- 内食、食材の利用に分解
- 外食の場合は欠損するのでMCMCで補完
というアプローチをとられています。
食卓メニューの販売促進効果を考慮した商品陳列決定モデル
高野先生らも矢野さんらと同じく「メーカー目線での棚割り」をテーマに分析をしています。
ただ、高野先生らは最適化問題として定式化して具体的な棚割りを作るところにフォーカスをしており
- 販促により食卓メニューに使用される食材の需要が増える
- 販促すると登場割合に応じて登場回数が増えると仮定
- うまく定式化して非線形性を除く
とされていますね。