売れるもマーケ当たるもマーケ マーケティング22の法則(アル・ライズ、ジャック・トラウト 共著、新井 喜美夫 訳)


売れるもマーケ 当たるもマーケ―マーケティング22の法則

概要

経営・マーケティングに求められるのは、概念枠組のくみたてと、分析力、応用力だ。マーケティング不滅の22の法則を紹介するテキスト。戦略形成のための必見の書。

感想

一番手の法則

他に優っていることよりも先頭を切ることの方が大切。次の質問を考えると納得。

  • 大西洋を最初に単独で横断人は?
  • 大西洋を二番目に単独で横断人は?

どんなカテゴリであれ市場をリードするブランドはほとんどと言っていいくらい顧客の心に最初に入り込んだブランドである(レンタカーのハーツ、コンピュータのIBM、コーラのコカコーラなど)。

人々は実態云々ではなく心に入り込んだ最初の商品を優れた商品であると知覚する。マーケティングとは知覚をめぐる戦いであって商品をめぐる戦いではない

カテゴリの法則

顧客の心に最初に入り込めなかったとしても一番手になれる新しいカテゴリを見つければよい。例えば大西洋を三番目に単独横断したアメリア・エアハートは「女性で最初に」単独横断した人として知られている。

  • 高級輸入ビールが登場した際のブッシュ社は「高級国内ビール」を発売
  • 国産初のライトビールの誕生後にアムステル・ライト社が「輸入ライトビール」を発売
  • IBMはコンピュータ業界で一番手。DECはミニコンピュータ業界で、タンデム社は無停止型コンピュータで一番手になった。

真っ先に問題にすべきは「この新商品は競合より優れているか?」ではなく「どこが新しいか?」である。言い換えればどのカテゴリーで一番手か?ということである。

心の法則

市場に最初に参入することより顧客の心の中に最初に入り込むほうがベターなのである。

  • マーケティングが商品ではなく知覚をめぐる戦いだとすれば市場よりも心の方が優先されなければならない
  • マーケティングにおける最も無駄な行為は人の心の中を変えようとする試みである
  • 心の中には一気に入り込まなければならない

知覚の法則

多くの人がマーケティングは商品の戦いであり、結局最良の商品が勝利すると考えている。こうした考えは幻想である。マーケティングの世界に存在するのはただ、顧客見込み客の心の中にある知覚だけである。知覚こそ現実であり、その他のものはすべて幻である。

例えば最も味が良いとされたニューコークの売上は三位で、もっともまずいとされたコカコーラ・クラシックが売上一位である。私たちは信じたいと思うものを信じるのであり、ソフトドリンクのマーケティングは味の戦いではなく知覚の戦いなのである。

集中の法則

ただ1個の言葉、コンセプトに焦点をしぼり心の中に「焼き付ける」のである。

  • フェデラル・エクスプレス社:「翌日配送」
  • IBM:「コンピュータ」
  • ハインツ:「どろりとしたケチャップ」
  • ロータス:「グループウェア」

独占の法則

自分の競合が顧客の心の中にある言葉を植え付けていたりあるポジションを占めている場合にその同じ言葉を植え付けようと試みるのは無駄である。いったん固まった大衆の心を変えることなどできやしない。

梯子の法則

人は心の中で商品やブランドに対する無意識/意識的な順序づけを行っている。この順序のどこに位置するのか正しく認識しその序列にあった戦略をとるべきだ。

レンタカー業界二番手のエイビスは

「エイビスはレンタカー業界で二番手にすぎません。だからそこご利用頂きたいのです。私たちは一生懸命頑張ります」

とメッセージを出し13年間赤字続きだったのを大幅な黒字に転換した。

顧客の心の中にあるあなたの商品の梯子はどんな梯子だろうか?

  • 毎日用いる商品は梯子の段数が多い
  • 滅多に買わない商品(トランクなど)は梯子の段数が少ない
  • 個人の自尊心に関わる商品(車、腕時計など)は段数が多い
  • 購入の頻度が低く、不快な経験を伴いやすい商品(生命保険、自動車バッテリーなど)は一般に段数が極め手少ない

二極分化の法則

マーケティングを長期的視点で見れば競争は二大主役(一般には老舗ブランド VS 新進ブランド)の全面戦争に収斂されていく。

対立の法則

強さの中に弱さが同居している。ナンバー2のあなたがしなければならないことはナンバー1のエッセンスを見つけ出し顧客にそれと反対ものものを提供することである。

分割の法則

時の経過と供にカテゴリは2つ以上に分割していく。業界のナンバー1がその座を維持する方法は新たに登場するカテゴリにそれぞれ異なるブランド名を使用することである。

遠近関係の法則

長期的なマーケティング効果は短期的な効果の正反対である場合が多い。

例えばバーゲンセールは短期的には売上を増やすが顧客に「正規の」価格では買わないように教え込むことになる結果、長期的には売上を減らす結果になる。

製品ライン拡張の法則

製品ラインの拡張とは成功した商品のブランド名をとって新しい商品の名前をつけることだ。ラインの拡張は効果が上がらないという圧倒的な証拠があるのになぜ多くの失敗を繰り返すのか?一つは短期的には成功することがあることだが、長期的には失敗する。

結局、ライン拡張は安直な打開策なのである。本来は新しいカテゴリに一番乗りをしないといけない。もしくはナンバーワンに代わるブランドとしてポジショニングされる必要がある。しかし、その地位はすでに他のだれかに先取りされていることが多く、古くから頼りになるライン拡張の手法にすがることになるのだ。

犠牲の法則

今日成功を望むなら何かを放棄しないといけない。

  • 製品ライン
  • ターゲット市場
  • 絶えざる変更

不振企業にとって製品のフルラインは贅沢である。もし成功を望むなら製品ラインを広げる代わりに減らすべきである。

ペプシはティーンエイジ市場を除くすべての市場を犠牲にすることでティーンエイジ市場を見事に開発した。フィリップ・モリスは男性をターゲットにしていたが、それをさらに「男の中の男」、つまりカウボーイに絞り込んだ。いまや、マルボロは世界で最も売れているタバコのひとつである。

一貫したポジションを維持するベストの方法は何よりもそのポジションを変えないことである。

属性の法則

「独占の法則」では競合が顧客の心に植えつけているポジションと同じものを植えつけることはできないと指摘した。しかし、会社はあまりにものナンバーワン企業を真似しすぎる。だが、これは良い考えではない。

ナンバーワンと張り合える「正反対」の属性を探したほうが良い。

たとえばコカコーラがオリジナルで年配者が選ぶ商品だったのに対してペプシはヤングが選ぶ商品としてポジショニングに成功した。

マーケティングはアイディアの戦いだ。だからもし成功したいのなら独自のアイディアや属性を用意して自分の努力をそこに傾注しなくてはならない。それができないのなら価格を徹底的に下げることだ。
また、競合が打ち出してきた新しい属性がどれだけのシェア占めるかを予測ですることはできないのだから決して馬鹿にしてはならない。

正直の法則

顧客の心に入り込む一番効果的な方法はまずネガティブ面を認めてポジティブ要素に変えることだ。

ただし、正直の法則は注意深く、巧みに行わなくてはならない。

  1. ネガティブメッセージが広く認知されていることが肝心。顧客に同調心がわかないといけない。
  2. ポジティブな訴えにすばやく移ること

一撃の法則

マーケティングにおいて実効を上げうる唯一の行動は一回きりの大胆な一撃である。さらにいかなる状況においても実質的な効果を上げうる作戦行動は一つしかありえない。

予測不能の法則

トレンドを追うことは予測不能な未来に対処する有用な手段になりうるが、マーケットリサーチは助けになるより問題を引き起こす場合が多い。マーケットリサーチが一番役立つのは過去を測定する場合であり、これに対して新しいアイデアやコンセプトについてはほとんど測定不能である。

あなたの持つ製品カテゴリに変化が生じた場合、あなた自身が進んでしかもすばやく変化を遂げなければならないのだ。

成功の法則

エゴはマーケティング成功させる上での敵である。求められるのは客観性だ。人は成功すると、とかく客観性を失いがちになる。彼らはしばしば自己の判断を市場のニーズと混同するのだ。

失敗の法則

ミスをしたときの上手なやり方は早いうちに認め損害を食い止めることだ。

成長促進の法則

ファッド(一時的流行現象)が現れたら水を差すことを心がけよう。商品の需要を長く維持する方法はその需要を完全には満足させないことだ。マーケティングにおいて利用すべきベストにして最高の利益をもたらすのは長期にわたるトレンドである。


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