確率変数XのモーメントE[Xn]の算出でよく用いるモーメント母関数ですが、確率密度関数の導出でも活躍します。2016年に出題された問題を例に見てみましょう。
2016年(数理統計)の大問2(4)で
指数分布(λ>0)に従う独立な確率変数X1,…,Xnに対し、Y=∑ni=1Xiとする。Yの確率密度関数はgn(y)={λnΓ(n)yn−1e−λy(y≥0)0(y<0)となることを示せ。
という問題が出題されました。数学的帰納法を使って示すこともできますが、
- Yのモーメント母関数
- gn(y)のモーメント母関数
が一致することを示すことでYの確率密度関数がgn(y)になることを示せます。その根拠となるのが以下の定理です。
確率変数X,Yの確率密度関数をそれぞれfX(u),fY(u)とし、モーメント母関数MX(t),MY(t)が存在するとする。MX(t)=MY(t)ならば、fX(u)=fY(u)である。
つまりモーメント母関数が一致することを示すことで確率密度関数の一致を示せます。図示すると以下の関係になります。
この定理を使って過去問を解いてみましょう。
まず、指数分布のモーメント母関数を求めると
MXi(t)=E[etXi]=λλ−t
になります。これより、
MY(t)=E[et∑ni=1Xi]=n∏i=1E[etXi]=(λλ−t)n
になります。
次にgn(y)のモーメント母関数を求めます。
まずg1(y)は指数分布の確率密度関数に他ならないのでMg1(y)(t)=λλ−tです。
さらに部分積分を使うことで
Mgn(y)(t)=λλ−tMgn−1(y)(t)
なので
Mgn(y)(t)=(λλ−t)n
が得られます。
以上より
MY(t)=Mgn(y)(t)
なのでYの確率密度関数はgn(y)に一致することが示せました。