【統計検定1級過去問】2015年(統計数理)大問2 解答例

投稿者: | 2017-09-04

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大問2は仮説検定の検出力に関する問題が出題されました。内容は

  • P値
  • 検出力
  • 一様最強検出力検定(ネイマン・ピアソンの補題)

と特に奇をてらったものはないですが、いずれも問題文中に定義が与えられておらず

覚えていなければ土俵にすら立てない

という怖さを持った問題セットです。

検定はついつい「平均の差の検定」など個別の検定手法を優先し、検出力/一様最強検出力検定は後手になりがちで試験会場で思わず天を仰いだ人もいたと思います。逆に言うと検定の評価方法である

をきっちり準備してきた人には易しい問題だと思います。

問題

無作為標本X1,,XnN(μ,1)を抽出する。ˉX=1nni=1Xiとし

  • 帰無仮説H0: μ=0
  • 対立仮説H1: μ>0

を考え、棄却域を

R={ˉX | ˉX>zαn}

とする。ここでzαは標準正規分布の上側100α%点である。この時、以下の問に答えよ。

(出典:「統計検定 1級・準1級 公式問題集」。問題文を一部略記。)

問1

n=10とし、ˉXの値ˉx0.3,0.6の時のP値を求めよ。さらにˉx0.0の範囲でP値の挙動を示すグラフを図示せよ。

帰無仮説H0が正しいとするとˉXN(0,1n)なのでˉX=ˉxが観測された時のP値はWN(0,1n),ZN(0, 1)および標準正規分布の累積分布関数Φ(x)を用いて

P(Wˉx)=P(Znˉx)=1Φ(nˉx)

となるので

  • ˉx=0.3の時、P値=1Φ(10×0.3)=0.17
  • ˉx=0.6の時、P値=1Φ(10×0.6)=0.03

である。またP値=1Φ(nˉx))のグラフは下図になる。

問2

ˉxが観測された時のP値を標準正規分布の累積分布関数Φ(x)を用いて表せ。さらにP値がαより小さくなることとˉxRは同値であることを示せ。

問1よりP値=1Φ(nˉx))である。また、

1Φ(nˉx))<αnˉx>zαˉx>zαnˉxR

である。

問3

α=0.05とする。n=9,16の場合についてμ=0.4,0.8の時の検出力を求めよ。さらにμ>0の範囲で検出力の挙動をn=9,16の場合について1つのグラフで図示せよ。

ˉXN(μ,1n)の時の検出力β(μ)

β(μ)=P(ˉXR)=P(ˉXμ1/n>zαnμ)=1Φ(zαnμ)

となる。これとz0.05=1.64であることから

  • n=9の時

    β(0.4)=0.33β(0.8)=0.78

  • n=16の時

    β(0.4)=0.48β(0.8)=0.94

になる。検出力関数を図示すると以下になる。(青線がn=9, 赤線がn=16の場合の検出力を示す。)

問4

α=0.05とする。μ=0.5のときの検出力を0.8以上にするためのnを求めよ。

β(0.5)0.8Φ(z0.050.5n)0.2z0.050.5nz0.8n4(z0.05z0.8)2

となりz0.05=1.64,z0.8=z0.2=0.84より

n24.6

なのでn25である。

問5

この検定は有意水準αの一様最強検出力検定であることをネイマン・ピアソンの補題に基づいて示せ。

まずμ=μ1(>0)を固定し単純仮説

  • H0: μ=0
  • H1: μ=μ1>0

を考える。ネイマン・ピアソンの補題より定数k>0と尤度比λ(x)=f(x|0)f(x|μ1)を用いて

  • λ(x)<kならばH0を棄却
  • λ(x)kならばH0を採択

とした検定は一様最強検出力検定である。

ここで

λ(x)=f(x|0)f(x|μ1)=exp[12ni=1x2i+12ni=1(xiμ1)2]=exp[nμ1(12μ1ˉx)]

ˉx=1nni=1xiの単調減少関数になるので定数cが存在し

λ(x)<kˉx>c

となるので棄却域R{ˉx | ˉx>c}と書ける。ここでc=zαnとおくと帰無仮説H0の下で

P(ˉX>zαn)=α

となるので単純仮説(帰無仮説H0, 対立仮説H1)に対する有意水準αの一様最強検出力検定である。さらにμ1>0は任意なので片側検定(帰無仮説H0, 対立仮説H1)に対する一様最強検出力検定である。

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