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大問2は仮説検定の検出力に関する問題が出題されました。内容は
- P値
- 検出力
- 一様最強検出力検定(ネイマン・ピアソンの補題)
と特に奇をてらったものはないですが、いずれも問題文中に定義が与えられておらず
覚えていなければ土俵にすら立てない
という怖さを持った問題セットです。
検定はついつい「平均の差の検定」など個別の検定手法を優先し、検出力/一様最強検出力検定は後手になりがちで試験会場で思わず天を仰いだ人もいたと思います。逆に言うと検定の評価方法である
をきっちり準備してきた人には易しい問題だと思います。
問題
- 帰無仮説H0: μ=0
- 対立仮説H1: μ>0
を考え、棄却域を
R={ˉX | ˉX>zα√n}
とする。ここでzαは標準正規分布の上側100α%点である。この時、以下の問に答えよ。
(出典:「統計検定 1級・準1級 公式問題集」。問題文を一部略記。)
問1
帰無仮説H0が正しいとするとˉX∼N(0,1n)なのでˉX=ˉxが観測された時のP値はW∼N(0,1n),Z∼N(0, 1)および標準正規分布の累積分布関数Φ(x)を用いて
P(W≥ˉx)=P(Z≥√nˉx)=1–Φ(√nˉx)
となるので
- ˉx=0.3の時、P値=1−Φ(√10×0.3)=0.17
- ˉx=0.6の時、P値=1−Φ(√10×0.6)=0.03
である。またP値=1–Φ(√nˉx))のグラフは下図になる。
問2
問1よりP値=1–Φ(√nˉx))である。また、
1–Φ(√nˉx))<α⇔√nˉx>zα⇔ˉx>zα√n⇔ˉx∈R
である。
問3
ˉX∼N(μ,1n)の時の検出力β(μ)は
β(μ)=P(ˉX∈R)=P(ˉX−μ1/√n>zα−√nμ)=1−Φ(zα−√nμ)
となる。これとz0.05=1.64であることから
- n=9の時
β(0.4)=0.33β(0.8)=0.78
- n=16の時
β(0.4)=0.48β(0.8)=0.94
になる。検出力関数を図示すると以下になる。(青線がn=9, 赤線がn=16の場合の検出力を示す。)
問4
β(0.5)≥0.8⇔Φ(z0.05−0.5√n)≤0.2⇔z0.05−0.5√n≤z0.8⇔n≥4(z0.05−z0.8)2
となりz0.05=1.64,z0.8=−z0.2=−0.84より
n≥24.6
なのでn≥25である。
問5
まずμ=μ1(>0)を固定し単純仮説
- H′0: μ=0
- H′1: μ=μ1>0
を考える。ネイマン・ピアソンの補題より定数k>0と尤度比λ(x)=f(x|0)f(x|μ1)を用いて
- λ(x)<kならばH′0を棄却
- λ(x)≥kならばH′0を採択
とした検定は一様最強検出力検定である。
ここで
λ(x)=f(x|0)f(x|μ1)=exp[−12n∑i=1x2i+12n∑i=1(xi−μ1)2]=exp[nμ1(12μ1−ˉx)]
とˉx=1n∑ni=1xiの単調減少関数になるので定数cが存在し
λ(x)<k⇔ˉx>c
となるので棄却域Rは{ˉx | ˉx>c}と書ける。ここでc=zα√nとおくと帰無仮説H′0の下で
P(ˉX>zα√n)=α
となるので単純仮説(帰無仮説H′0, 対立仮説H′1)に対する有意水準αの一様最強検出力検定である。さらにμ1>0は任意なので片側検定(帰無仮説H0, 対立仮説H1)に対する一様最強検出力検定である。
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