素数を小さい順に[math]p_1, p_2, \dots[/math]とするとボンゼの不等式(Bonse’s inequality)と呼ばれる次の関係が成立します。
[math]
p_1 \cdot p_2 \cdot p_3 \cdots p_n > p_{n+1}^2
[/math]
[math]n+1[/math]番目の素数は[math]n[/math]番目までの素数の積の平方根より小さくなることを示しており素数の間隔について情報を与えてくれます。
例えば[math]p_1=2,\ p_2=3,\ p_3=5,\ p_4=7[/math]なので
[math]
p_1 \cdots p_4 = 2\cdot 3 \cdot 5 \cdot 7 = 210 > p_5^2
[/math]
より[math]p_5 \leq 14[/math]がわかります。(実際、[math]p_5=11[/math]なので成立しています)
ここではベルトラン・チェビシェフの定理
を使ってボンゼの不等式を示します。
ボンゼの不等式の証明
数学的帰納法で示します。
[math]
p_1 \cdots p_4 = 2\cdot 3 \cdot 5 \cdot 7 = 210 > 11^2 = p_5^2
[/math]
より[math]n=4[/math]で成立します。
[math]n=k(\geq 4)[/math]での成立を仮定します。仮定より
[math]
p_1 \cdot p_2 \cdot p_3 \cdots p_k > p_{k+1}^2
[/math]
が成立し、両辺に[math]p_{k+1}[/math]をかけると
[math]
p_1 \cdot p_2 \cdot p_3 \cdots p_k\cdot p_{k+1} > p_{k+1}^3
[/math]
となります。
ここでベルトラン・チェビシェフの定理
より[math]p_{k+1}[/math]と[math]2p_{k+1}[/math]の間に素数[math]p_{k+2}[/math]が存在するので[math]p_{k+2} \leq 2p_{k+1}[/math]がわかります。
これより
[math]
p_{k+1}^3 \geq \dfrac{p_{k+2}^3}{8} > p_{k+2}^2 \quad (\because p_{k+2} > 8)
[/math]
なので
[math]
p_1 \cdot p_2 \cdot p_3 \cdots p_k\cdot p_{k+1} > p_{k+2}^2
[/math]
が成立し[math]n=k+1[/math]でも成立することがわかります。
また、同様の議論で次の関係を示すこともできます。
[math]
p_1 \cdot p_2 \cdot p_3 \cdots p_n > p_{n+1}^k
[/math]
ベルトラン・チェビシェフの定理を使ってボンゼの不等式を示すことができました。ベルトラン・チェビシェフの定理については
にまとめているので関心のある方はご参照ください。