概要
ギャンブル研究で有名な谷岡氏による統計的な立場から「ツキ」の正体を明らかにした書。
結論を言ってしまうと
ツキの正体は、統計学上の「必然的な偏り(ゆらぎ)」にすぎず、そのゆらぎは存在しない方がおかしい。(本書P.140)
と身も蓋もない話ですが、その「ゆらぎ」がたまたま儲けにつながった人達による「ギャンブルの必勝法」の矛盾、欠陥を完膚なきまでに論破しています。特に宝くじの広告へのダメ出し(本書P.18〜)は読んでいて痛快です。
ちなみに谷岡氏自身が相当な時間をギャンブルに注いでいることもあってか、ギャンブルでは日常生活とは違った緊張や興奮を味わうことができるとポジティブに捉えられています。その上で「より少ないコストで長く楽しむ賭け方」を考察していててギャンブルをする人は必見です。
一方で本書でも指摘されている通り
- なんら科学的な根拠をないことを知った上で、意図的に紛らわしい表現を使ってあたかも「次はあたなが勝てる」と誤認させるようなメッセージが世の中には溢れている
- 教育を充分に受ける機会に恵まれなかった人々、その結果として所得レベルが平均より低い人々ほどその無意味なメッセージを信じてしまいやすい
であり、そういった人たちが谷岡氏推薦の賭け方の合理性を理解できるのだろうか?という疑問を感じずにはいられないですが、統計をある程度知った上で本書を読むとギャンブルに対する見方が変わるのではと思います。