AIはどうしても「技術的にこんなことができる」という話が先行しますが、ビジネス活用にあたっては
- AIを構築する際の第三者が著作権を持つ学習データを利用してよいのか
- 構築したAIをどう権利保護するか
- AIが想定外の挙動をした場合の責任はどうなるのか
- AIが資格が必要な行為(医療行為、法律文書作成など)を行えるか
など「できる/できない」ではなく「やって良い/悪い」といった法律面も考慮する必要があります。
本書では法律家の方々がAIをビジネス活用する際に直面する課題、事象について
- 現時点での法律における解釈
- AI生成物に対する著作権保護など法律が未整備なテーマでは今取れる対応策
についてオムニバス形式で解説しています。構成としては
- 業務(自動運転、医療など)ごとにAI活用例と想定される法的な問題点
- AIを作成/構築/運用していく際に直面する法的な問題点
と「AI利用者」「AI構築者」両者の目線で解説がされています。それぞれの立場で必要な章をピックアップして読めばよいと思います。
たとえば「AIと労働」という章では「AIによる人員削減」を想定し整理解雇の有効性を検討しています。その上で今後どういう雇用契約にすべきかを説明するなどかなりリアルなところまで踏み込んでいますね。
また、AI構築者にとっても「AIと学習データの問題」「AIと知的財産」の章は
- 学習データ利用時に考慮しないといけない法的課題
- AI生成物(AIが生成した画像や音楽など)の現行法での考え方と権利保護の仕組み
- AI自身の権利保護
が解説されており必読です。
もちろん多くの法的課題は法律が実情に追いついていない状況で、今後状況は変わってくると思いますがAIをビジネス活用に取り組んでいる人はぜひ一度目を通す価値のある本だと思います。