【統計検定1級過去問】2016年(理工学)大問1 解答例

投稿者: | 2017-08-06

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大問1はぱっと見た目には実験計画法の問題に見えますが、実質的には統計量の不偏性と分散の算出を行う問題で他の大問と比べると易しい問題だと思います。

唯一、問4が何を解答すれば良いのか題意を捉えづらいのですが、ここでは問1~3の流れから「最小分散線形不偏推定量」であることを示します。

問題

処理[math]A_i(i=1,2,3,4)[/math]を5つのブロック[math]B_j(j=1,\dots,5)[/math]に配置して1回ずつ実験する。

処理[math]A_i[/math]がブロック[math]B_j[/math]で実験した時の観測値を[math]Y_{ij}[/math]としブロック計画モデル

[math]Y_{ij}=\mu+\tau_i+\beta_j+\epsilon_{ij}[/math]

を考える。ここで

  • [math]\mu[/math]: 一般平均
  • [math]\tau_i[/math]: 処理[math]A_i[/math]の処理効果([math]\sum_{i}\tau_i=0[/math])
  • [math]\beta_j[/math]: ブロック[math]B_j[/math]の処理効果([math]\sum_{j}\beta_j=0[/math])
  • [math]\epsilon_{ij}[/math]: 互いに独立な誤差([math]E[\epsilon_{ij}]=0,\ V[\epsilon_{ij}]=\sigma^2[/math])

とする時、以下の問に答えよ。

(出典:2016年受験時の問題冊子。問題文を一部略記。)

問1

[math]T_1=Y_{11}-Y_{21}[/math], [math]T_2=Y_{12}-Y_{22}[/math], [math]T_3=Y_{15}-Y_{25}[/math]は[math]\tau_1-\tau_2[/math]の不偏推定量であることを示せ。また、[math]V[T_1],\ V[T_2],\ V[T_3][/math]を求めよ。

[math]E[Y_{ij}]=\mu+\tau_i+\beta_j[/math]より[math]E[Y_{1j}-Y_{2j}]=\tau_1-\tau_2[/math]なので[math]T_1,\ T_2,\ T_3[/math]はいずれも[math]\tau_1-\tau_2[/math]の不偏推定量である。

また[math]V[Y_{ij}]=\sigma^2[/math]より[math]V[Y_{1j}-Y_{2j}]=2\sigma^2[/math]なので[math]V[T_k]=2\sigma^2(k=1,2,3)[/math]である。

問2

[math]Y_{13},\ Y_{33},\ Y_{43},\ Y_{24},\ Y_{34},\ Y_{44}[/math]の線形結合を考え、[math]\tau_1-\tau_2[/math]の不偏推定量かつ分散が最小の推定量[math]T_4[/math]を求め、[math]V[T_4][/math]を求めよ。

[math]
\begin{eqnarray}
U=&c&_{13}Y_{13}+c_{33}Y_{33}+c_{43}Y_{43} \\
&+&c_{24}Y_{24}+c_{34}Y_{34}+c_{44}Y_{44}
\end{eqnarray}
[/math]

とおき、[math]\tau_1-\tau_2[/math]の不偏推定量であるとする。この時、[math]E[U]=\tau_1-\tau_2[/math]が恒等的に成立するので[math]\tau_1, \tau_2, \tau_3, \tau_4, \beta_3[/math]の係数を比較して

[math]
\begin{cases}
c_{13}=1 \\
c_{24}=-1 \\
c_{33}+c_{34}=0 \\
c_{43}+c_{44}=0 \\
c_{13}+c_{33}+c_{43}=0
\end{cases}
[/math]

なので、これを解いて

[math]
\begin{eqnarray}
U=&Y&_{13}-Y_{24}+c_{33}(Y_{33}-Y_{34})\\
&-&(1+c_{33})(Y_{43}-Y_{44})
\end{eqnarray}
[/math]

を得る。さらに[math]V[U]=2\sigma^2\left\{1+c_{33}^2+(1+c_{33})^2\right\}[/math]なので、[math]c_{33}=-\frac{1}{2}[/math]の時に分散は最小になり、最小値は[math]3\sigma^2[/math]である。

以上より

[math]
\begin{eqnarray}
T_4=&Y&_{13}-Y_{24}-\frac{1}{2}(Y_{33}-Y_{34})\\
&-&\frac{1}{2}(Y_{43}-Y_{44})
\end{eqnarray}
[/math]

であり、[math]V[T_4]=3\sigma^2[/math]である。

問3

[math]w>0[/math]として

[math]T=\dfrac{T_1+T_2+T_3+wT_4}{3+w}[/math]

が[math]\tau_1-\tau_2[/math]の不偏推定量であることを示し、[math]V[T][/math]を求めよ。さらに[math]V[T][/math]が最小になる[math]w[/math]を求め、その時の[math]T, V[T][/math]を求めよ。

[math]E[T_k]=\tau_1-\tau_2\ (k=1,\dots,4)[/math]より[math]E[T]=\tau_1-\tau_2[/math]が成立し、[math]T[/math]は[math]\tau_1-\tau_2[/math]の不偏推定量である。

また、[math]V[T_k]=2\sigma^2(k=1,2,3)[/math], [math]V[T_4]=3\sigma^2[/math]なので

[math]
V[T]=\dfrac{(6+3w^2)\sigma^2}{(3+w)^2}
[/math]

である。ここで[math]f(w)=\dfrac{2+w^2}{(3+w)^2}[/math]とおき、その最小値を求める。

[math]
\begin{eqnarray}
&&f(w) \\
&=& \dfrac{(3+w)^2-6(3+w)+11}{(3+w)^2} \\
&=& 1-\dfrac{6}{3+w}+\dfrac{11}{(3+w)^2}
\end{eqnarray}
[/math]

ここで[math]v=\frac{1}{3+w}[/math]と置換し[math]w>0[/math]より[math]0 < v < \frac{1}{3}[/math]における最小値を求めると

[math]
\begin{eqnarray}
&& 1-6v+11v^2 \\
&=& 11\left(v-\dfrac{3}{11}\right)^2+\dfrac{2}{11}
\end{eqnarray}
[/math]

より[math]v=\frac{3}{11}[/math]、つまり[math]w=\frac{2}{3}[/math]の時、最小値[math]\frac{2}{11}[/math]を取る。以上より
[math]T=\frac{3}{11}(T_1+T_2+T_3)+\frac{2}{11}T_4[/math]および[math]V[T]=3\sigma^2f(w)=\frac{6}{11}\sigma^2[/math]を得る。

問4

問3で求めた推定量[math]T[/math]の最適性を論ぜよ。
漠然とした問いで何を示せば良いのか題意を捉えづらいです。問題の流れが

  • 問1~2: 12個の確率変数を4つのグループ[math](Y_{11},\ Y_{21}),\ (Y_{12},\ Y_{22}),\ (Y_{15},\ Y_{25})[/math]および[math](Y_{13},\ Y_{33},\ Y_{43},\ Y_{24},\ Y_{34},\ Y_{44})[/math]に分け分散が最小になる不偏推定量を求める
  • 問3: 問1, 2で求めた推定量の加重和を考え分散が最小になる推定量を求める

となっており、この流れから[math]T[/math]は最小分散線形不偏推定量になっていることが予想されます。ここでは[math]T[/math]が最小分散線形不偏推定量になることを示します。

確率変数[math]Y_{i,j}[/math]の線形推定量[math]X=\sum_{i,j}c_{ij}Y_{ij}[/math]を考え、[math]\tau_1-\tau_2[/math]の不偏推定量とする。ここで、線形空間を分割した部分空間

  • [math](Y_{11},\ Y_{21},\ Y_{31})[/math]による線形推定量の空間
  • [math](Y_{12},\ Y_{22},\ Y_{42})[/math]による線形推定量の空間
  • [math](Y_{13},\ Y_{33},\ Y_{43},\ Y_{24},\ Y_{34},\ Y_{44})[/math]による線形推定量の空間
  • [math](Y_{15},\ Y_{25},\ Y_{35},\ Y_{45})[/math]による線形推定量の空間

を考える。各部分空間で[math]\tau_1-\tau_2[/math]の不偏推定量を考えると[math]T_1,\ T_2,\ T_3,\ T_4[/math]になることから線形不偏推定量[math]X[/math]は

[math]X=\displaystyle\sum_{i=1}^4 w_i T_i,\ \sum_{i=1}^4 w_i=1[/math]

と書ける。分散を考えると

[math]V[X]=(2w_1^2+2w_2^2+2w_3^2+3w_4^2)\sigma^2[/math]

となる。[math]\sum_{i=1}^4 w_i=1[/math]の下で[math](2w_1^2+2w_2^2+2w_3^2+3w_4^2)[/math]を最小にする[math]w_i[/math]を求めればよく、制約付き最小化問題として考えるとラグランジュ乗数[math]\lambda[/math]が存在し、

[math](4w_1\ 4w_2\ 4w_3\ 6w_4)^T + \lambda(1\ 1\ 1\ 1)^T=0[/math]

が成立することと、[math]\sum_{i}w_i=1[/math]とあわせて

[math]w_1=w_2=w_3=\frac{3}{11},\ w_4=\frac{2}{11}[/math]

となる。これは問3で求めた[math]T[/math]に他ならず[math]T[/math]は最小分散線形不偏推定量である。

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