【統計検定1級過去問】2017年(理工学)大問1 解答例

投稿者: | 2018-02-05

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大問1はガンマ分布に関する問題が出題されました。問4までは特に悩むことなく進められると思いますが、問5で問題文中の「[math]\eta(\alpha)[/math]が単調増加関数であることを用いてよい。」という文言を「狭義単調増加」と捉えてよいのかで難度に天と地の差が出ます。

ここでは[math]\eta(\alpha)[/math]が狭義単調増加であることも示しますが試験会場で思いつくのは限りなく不可能な解答だと思います。正直、簡単に示す方法が分からなかったので公式問題集の解答が出たら修正したいと思います。

(2018年3月18日追記)「公式問題集」が出たので確認すると「[math]\eta(\alpha)[/math]が狭義単調増加」であることを無証明で使っていたので特に証明しなくても減点はされなかったのではと思います。

問題

ある電子部品の寿命[math]X[/math]はガンマ分布[math]Gamma(\alpha, \beta)[/math]に従うとする。ここで[math]Gamma(\alpha, \beta)[/math]の確率密度関数は

[math]
f(x)=\begin{cases}\dfrac{1}{\beta^\alpha \Gamma(\alpha)}x^{\alpha-1}e^{-x/\beta} &(x > 0) \\ 0 &(x \leq 0)\end{cases}
[/math]

である。[math]n[/math]個の電子部品の寿命の試験結果[math]X_1,\dots,X_n[/math]の実現値を[math]x_1,\dots,x_n[/math]とし[math]x_1=\cdots=x_n[/math]ではないとする。この時、以下の問に答えよ。

(出典:統計検定HP「統計検定 1級の過去問題」。問題文を一部略記。)

問1

[math]E[X]=\alpha\beta[/math]および[math]V[X]=\alpha\beta^2[/math]であることを示せ。

まず期待値を求めると[math]\Gamma(\alpha+1)=\alpha\Gamma(\alpha)[/math]に注意して

[math]
\begin{eqnarray}
&& E[X] \\
&=& \int_{0}^\infty \dfrac{1}{\beta^\alpha\Gamma(\alpha)}x^\alpha e^{-x/\beta}dx \\
&=& \alpha\beta\int_{0}^\infty \dfrac{1}{\beta^{\alpha+1}\Gamma(\alpha+1)}x^\alpha e^{-x/\beta}dx \\
\end{eqnarray}
[/math]

であり積分部分は[math]Gamma(\alpha+1,\beta)[/math]の定義域全体での積分なので[math]1[/math]になり、これより[math]E[X]=\alpha\beta[/math]である。

同様に[math]E[X^2][/math]を求めると[math]E[X^2]=\alpha(\alpha+1)\beta^2[/math]を得るので

[math]
\begin{eqnarray}
V[X] &=& E[X^2] – (E[X])^2 \\
&=& \alpha(\alpha+1)\beta^2 – \alpha^2\beta^2\\
&=& \alpha\beta^2
\end{eqnarray}
[/math]

を得る。

問2

対数尤度関数[math]l(\alpha, \beta;\ \mathbf{x})[/math]を求めよ。

対数尤度関数を求めると

[math]
\begin{eqnarray}
&& l(\alpha, \beta;\ \mathbf{x}) \\
&=& \sum_{i=1}^n \log f(x_i) \\
&=& -n\alpha \log\beta -n\log\Gamma(\alpha) \\
&& + (\alpha – 1)\sum_{i=1}^n\log x_i – \dfrac{1}{\beta}\sum_{i=1}^n x_i
\end{eqnarray}
[/math]

である。

問3

尤度方程式から[math]\psi(\alpha)-\log\alpha=\log\dfrac{\tilde{x}_n}{\bar{x}_n}[/math]および[math]\beta=\dfrac{\bar{x}_n}{\alpha}[/math]を導けることを示せ。ここで[math]\bar{x}_n=\frac{1}{n}\sum_{i=1}^n x_i[/math], [math]\tilde{x}_n=\left(\prod_{i=1}^n x_i\right)^{1/n}[/math]であり[math]\psi(\alpha)[/math]は対数ガンマ関数の1次導関数(ディガンマ関数)である。

[math]\bar{x}_n, \tilde{x}_n[/math]を用いると対数尤度関数は

[math]
\begin{eqnarray}
&& l(\alpha, \beta;\ \mathbf{x}) \\
&=& -n\left\{\alpha \log\beta +\log\Gamma(\alpha)\right. \\
&& \quad \left. – (\alpha – 1)\log \tilde{x}_n + \bar{x} / \beta \right\}
\end{eqnarray}
[/math]

とかける。[math]\alpha, \beta[/math]でそれぞれ偏微分して尤度方程式を求めると

[math]
\begin{cases}
-n(\log\beta+\psi(\alpha)-\log\tilde{x}_n)=0 \\
-n\left(\dfrac{\alpha}{\beta} – \dfrac{\bar{x}_n}{\beta^2} \right) = 0
\end{cases}
[/math]

になり、これを解いて

[math]
\begin{cases}
\psi(\alpha)-\log\alpha=\log\dfrac{\tilde{x}_n}{\bar{x}_n} \\
\beta=\dfrac{\bar{x}_n}{\alpha}
\end{cases}
[/math]

を得る。

問4

[math]\bar{x}_n=1000[/math], [math]\log\tilde{x}_n=6.36[/math]の時、[math]\alpha, \beta[/math]の最尤推定量を求めよ。なお、[math]\eta(\alpha)=\psi(\alpha)-\log\alpha[/math]のグラフは以下になる。

[math]\bar{x}_n=1000[/math], [math]\log\tilde{x}_n=6.36[/math]より[math]\eta(\alpha)=-0.547[/math]でありグラフより[math]\alpha=1[/math]である。これより[math]\beta=\frac{\bar{x}_n}{\alpha}=1000[/math]である。

問5

一般の場合に[math]\alpha, \beta[/math]の最尤推定値が一意的に存在することを示せ。ここで[math]\eta(\alpha)=\psi(\alpha)-\log\alpha[/math]は[math]\alpha\in (0,\infty)[/math]で単調増加関数になることは用いてよい。
問題文中の「[math]\eta(\alpha)[/math]が単調増加関数であることを用いてよい。」という文言を「狭義単調増加」と捉えて良いのであれば簡単な問題ですが、[math]\eta(\alpha)[/math]が狭義単調増加になることを示そうとすると難しい問題になります。

簡単な解法が思いつかなかったので、ここでは[math]\dfrac{d}{d\alpha}\psi(a)=\displaystyle\sum_{n=0}^\infty\dfrac{1}{(\alpha + n)^2}[/math]と級数表示できる(参考:Wikipedia「ディガンマ関数」)ことを使って示します。

[math]\eta'(\alpha)=\psi'(a)-1/\alpha[/math]であり[math]\psi'(a)[/math]は

[math]
\psi'(a)=\displaystyle\sum_{n=0}^\infty\dfrac{1}{(\alpha + n)^2}
[/math]

と書けることに注意する。

ここで関数[math]y=1/x^2[/math]の区間[math][\alpha+n,\ \alpha+n+1][/math]の面積と高さ[math]1/(\alpha+n)^2[/math]、幅[math]1[/math]の矩形の面積を比較すると

[math]
\dfrac{1}{(\alpha+n)^2} > \displaystyle\int_{\alpha+n}^{\alpha+n+1} \dfrac{1}{x^2}dx
[/math]

が成立する。[math]n=0,1,2,\dots[/math]について両辺の和をとって

[math]
\begin{eqnarray}
\sum_{n=0}^\infty\dfrac{1}{(\alpha + n)^2} &>& \displaystyle\int_{\alpha}^{\infty} \dfrac{1}{x^2}dx \\
&=& \dfrac{1}{\alpha}
\end{eqnarray}
[/math]

を得る。これより任意の[math]\alpha > 0[/math]で

[math]
\eta'(\alpha) > 0
[/math]

なので[math]\eta(\alpha)[/math]は[math]\alpha > 0[/math]で狭義に単調増加である。

したがって[math]\eta(\alpha)[/math]は[math]\eta(\alpha)=\log\dfrac{\tilde{x}_n}{\bar{x}_n}[/math]は[math]\alpha[/math]について一意の解を持ち、この[math]\alpha[/math]から[math]\beta[/math]も一意にきまるので[math]\alpha, \beta[/math]の最尤推定値は一意に存在する。

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