【統計検定1級過去問】2015年(理工学)大問1 解答例

投稿者: | 2017-09-05

コメント

大問1はぱっと見は確率の問題のようで中身は畳み込み級数の和の計算がほとんどで統計色の薄い問題セットでした。小問が6つありますが

  • [math]f(k)[/math]を部分分数分解して[math]f(k)=g(k)-g(k+1)[/math]の形に変形
  • [math]\displaystyle \sum_{k=1}^\infty f(k)=\lim_{n\to\infty}\left(g(1)-g(n+1)\right)[/math]を評価

を繰り返すだけで特に難しい問題もないので完答できた人も多かったと思います。

問題

壷の中に赤い球と白い球が1つずつ入っている。次のゲームを考える。

  1. 壷から球を1つランダムに取り出す。
  2. 取り出した球が白ならば白い球を1つ壷に加え1に戻る。
  3. 取り出した球が赤ならば壷の中の白い球の数を数え、その数を得点[math]X[/math]としゲームを終了する。

以下の問に答えよ。

(出典:「統計検定 1級・準1級 公式問題集」。問題文を一部略記。)

問1

得点[math]X[/math]が[math]k\in\mathbb{N}[/math]になる確率[math]P(X=k)[/math]を求めよ。

得点が[math]X=1[/math]となるのは1回目に取り出した球が赤の場合なので[math]P(X=1)=\dfrac{1}{2}[/math]である。

得点が[math]X=k(\geq 2)[/math]となるのは

  • [math]1[/math]~[math](k-1)[/math]回目に取り出した球が白
  • [math]k[/math]回目に取り出した球が赤

になる時なので

[math]
\begin{eqnarray}
P(X=k) &=& \dfrac{1}{2}\times \cdots \times \dfrac{k-1}{k}\times\dfrac{1}{k+1} \\
&=&\dfrac{1}{k(k+1)}
\end{eqnarray}
[/math]

であり、[math]k=1[/math]の場合も成立する。

問2

関数[math]f(k)=P(X=k)[/math]は確率関数になることを示せ。

明らかに[math]f(k)\geq 0[/math]であり

[math]
f(k)=\dfrac{1}{k}-\dfrac{1}{k+1}
[/math]

より

[math]
\sum_{k=1}^n f(k)=1-\dfrac{1}{n+1}
[/math]

なので[math]n\to\infty[/math]として

[math]
\sum_{k=1}^\infty f(k)=1
[/math]

が成立する。よって[math]f(k)[/math]は確率関数である。

問3

[math]X[/math]の平均、分散が存在するか述べよ。

[math]
\begin{eqnarray}
E[X] &=& \sum_{k=1}^\infty kf(k) \\
&=& \sum_{k=1}^\infty \dfrac{1}{k+1} \\
&=& \infty
\end{eqnarray}
[/math]

なので平均は存在せず、分散も存在しない。

問4

[math]P(k)=\dfrac{18}{k(k+1)(k+2)(k+3)},\ k\in\mathbb{N}[/math]は確率関数になることを示せ。以下、この確率関数の分布に従う確率変数を[math]Y[/math]とする。

まず明らかに[math]P(k)\geq 0[/math]である。

次に[math]P(k)[/math]の部分分数分解を求めると

[math]
\begin{eqnarray}
&&\dfrac{1}{k(k+1)(k+2)} – \dfrac{1}{(k+1)(k+2)(k+3)}\\
&=&\dfrac{3}{k(k+1)(k+2)(k+3)}
\end{eqnarray}
[/math]

なので[math]g(k)=\dfrac{1}{k(k+1)(k+2)}[/math]とおくと

[math]
P(k) = 6(g(k)-g(k+1))
[/math]

と書ける。これより

[math]
\begin{eqnarray}
&&\sum_{k=1}^n P(k) \\
&=& 6(g(1)-g(n+1))
\end{eqnarray}
[/math]

であり[math]g(1)=\frac{1}{6}[/math]および[math]g(n)\to 0\ (n\to\infty)[/math]より

[math]
\sum_{k=1}^\infty P(k)=1
[/math]

が成立する。よって[math]P(k)[/math]は確率関数である。

問5

[math]E[Y][/math]を求めよ。

[math]
E[Y] = \displaystyle\sum_{k=1}^\infty \dfrac{18}{(k+1)(k+2)(k+3)}
[/math]

を求めれば良く

[math]
\begin{eqnarray}
&&\dfrac{1}{(k+1)(k+2)}-\dfrac{1}{(k+2)(k+3)} \\
&=&\dfrac{2}{(k+1)(k+2)(k+3)}
\end{eqnarray}
[/math]

に注意すると

[math]
\begin{eqnarray}
&&\sum_{k=1}^\infty \dfrac{18}{(k+1)(k+2)(k+3)}\\
&=& 9\sum_{k=1}^\infty \left\{\dfrac{1}{(k+1)(k+2)}-\dfrac{1}{(k+2)(k+3)}\right\} \\
&=& \dfrac{3}{2}
\end{eqnarray}
[/math]

より[math]E[Y] = \dfrac{3}{2}[/math]である。

問6

[math]E[Y(Y+1)][/math]を求め、[math]V[Y][/math]を求めよ。

[math]
E[Y(Y+1)]=\displaystyle\sum_{k=1}^\infty \dfrac{18}{(k+2)(k+3)}
[/math]

であり問2より[math]\sum_{k=1}^\infty \dfrac{1}{k(k+1)}=1[/math]なので

[math]
\begin{eqnarray}
&& \sum_{k=1}^\infty\dfrac{1}{(k+2)(k+3)}\\
&=& \sum_{k=1}^\infty \dfrac{1}{k(k+1)} – \dfrac{1}{2} – \dfrac{1}{6} \\
&=& \dfrac{1}{3}
\end{eqnarray}
[/math]

なので

[math]
E[Y(Y+1)]=6
[/math]

である。また

[math]
\begin{eqnarray}
V[Y] &=& E[Y^2]-(E[Y])^2 \\
&=& E[Y(Y+1)]-E[Y]-(E[Y])^2 \\
&=& 6 – \dfrac{3}{2} – \dfrac{9}{4} \\
&=&\dfrac{9}{4}
\end{eqnarray}
[/math]

なので[math]V[Y]=\dfrac{9}{4}[/math]である。

シリーズ記事

スポンサーリンク


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です